1. 20:05 25th 2月 2012

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    yaruoからリブログ

    ただ、私はわが国の『ブラック企業』は、諸外国(途上国含む)の下請け低賃金労働とは異質な形質で進化したと考えている。

    その一番の部分を端的に述べるのは難しいが、やはり時代が変わり、デフレ化、顧客のサービス、ニーズも大きく変わっているのに、新しい商品やサービスのフレームを模索するのではなくて、逆にこれでもかというくらいに従来の方法論をマンパワーでゴリ押しする点が共通していると思う。

    穴の開いたバケツの穴を塞ぐのではなくて、漏れること覚悟でガバ入れで水を汲むのだ。そしてこの場合の水は使い捨ての労働者である。

    某〇〇機営業販売会社は常に多数求人が出ているが、これも上記と同じだ。ノルマ達成できなければガラスの灰皿で殴ったり、数時間ゲキ詰めさせたり、営業先に話を聞いてもらえるまで待機させるようなストーカー行為を強いる、などなど

    労働者が短期間で壊れて辞めることを前提に雇っている状態だろう。そして労働者側も『正社員』という従来の定型を求めて、ブラックと知っていても入ってしまう。悪い意味で上手い循環ができているのかもしれない。

    しかし自分が諸外国の低賃金労働と日本のブラック企業が違う生態系の生物だと考えるのは、労働者使い捨ての部分ではない(使い捨ては途上国も酷い)

    それは低賃金、長期労働なのに現場の労働のモラルハザードが起きていない点である。それどころか賃金低下、サービスの価格低下に反比例するかのように神経症的にサービスを特化させている印象すらある。これはわが国外食産業で象徴的だ。

    途上国を含む海外旅行をしたことある人なら分かると思うが、低価格飲食店のサービスは雑である。厳密に言うと雑というより『セルフサービス的』という印象だろうか。

    これは単純な現象で、低賃金労働では従業員のモチベーションが上がらず。その為に比例してサービスの質も落ちる。だからそのモラルハザード(手抜き)の萌芽を放置するより、セルフ形式で半オートメーション化したほうがいいので、結局の所、店員は無愛想だが低価格で自分で取って食べて、みたいな『東南アジア化』したサービス形態に均衡安定するのだろう。これは世界的な低価格外食産業サービス均衡例ではないだろうか。

    しかし我が国の外食産業サービスは独自の進化を経ている。低価格化の価格競争に勝つため、さらに物的コストを必要としない従業員の『お客様サービス』を上乗せして対抗しようとする。その結果、低価格・低賃金なのに過剰サービスという単純な行動ファイナンスでは解析不能な現象が起きているのだ。何故、解析が不能なのかというと『従業員のモラルハザード』という低賃金長期労働に対して諸外国では不可避に起こるべき事態が、我が国では全く起きていないからである。ここで言うモラルハザードとはレジの金銭を盗むことなどではない、時々サボったり、手を抜いたり、休んだりする個々の労働者の適度な息抜きのことだ。それどころかサービスは完璧に徹底された様相すら見せている。これをわが国独自のガラパゴス生態系『ワタミ化』と銘銘したい。(従業員のモチベーションは明らかに低下しているだろうが、それが行為に現れない点が深い民族性を象徴していると思う)

    しかしこれと類似する現象は今に始まったことではないだろう。補給も不十分な状態で行軍し数万の兵士が餓死したインパール作戦や、バンザイ突撃等々、上が無謀でも現場は死ぬまで頑張るのだ。馬鹿らしいと分かっていてもだ。

    自分は、何度も同じような結論になるが、やはり現代においても、もしくは自分も含めて日本人の精神性は家父長的な村社会構造に根ざしているのではないかと思う。モラルハザードが良いとは思わないが、多くの労働現場で発現されない現状は『1人だけ違う行為をする』という事に対して、凄まじい心理的制約があるからだろう。村社会構造の組織では、集団の一員であるか否かが一番需要な問題で、合理性よりも形式にこだわる。エクセルでマクロを組んで飛ばし短縮するより、タイプ入力で逐次打ち込む方が可愛げがある部下だったり、清掃員を雇っている会社でも残業して雑巾がけでもしているほうが気に入られる。労働の細部機微にその集団に従属しているか否かを確かめる形式儀式があり、それが手書き書類だったり、ある階級以下の者はエレベーターを使わないことだったりする。そしてそれを拒否すると村の所属成員ではないとみなされ『村八分』にされる。労働環境に対する不満や、モラルハザードどころか定時に帰るだけで論外という現状だろう。『ミンナ、ガンバッテイルンダカラ』という理由でだ。

    日本企業は高度成長期に農村から出てきた人員を吸い取る形で拡大してきた。だからわが国の企業文化は欧米と違い農村構造の映し鏡なのかもしれない。

    そのような同調均衡で安定化しているのが日本の労働現場なのだろう。だから低価格・低賃金・過剰サービスという不気味な東洋の奇跡が実現したのかもしれない。不満にしろ、法的解決にしろ『村とは違う声』をあげる事ができないのだ。だから労働者は凄まじい負担を強いられても自身を責めたり、逆最適化してしまうケースすらある。そこで支配しているのは個人ベースの契約原理ではなく職場の『空気』なのだろう。劣悪な労働環境に対して不満の声をあげる事も、拒否することもできない。

    ブラック企業の多くは、この形式儀式のフォーマットを上手く利用していると思う。従業員の反応の機微すべてをある種の家族愛的な家父長構造(一見体育会的)で囲い込んで、本来従業員が持つべき正常な契約ベースの労働/賃金権利感覚を麻痺させている。(どうしたんだ、みんな頑張ってるよ!ファイト、みたいな意味不明なアレである)

    だが、これも1つの先送りだろう。太平洋戦争において万歳突撃が結局は破綻したように、ブラック企業のマンパワーゴリ押し戦術もいづれは破綻する。

    日本人にモラルハザードは向かないかもしれないが、村組織の同調圧力を壊すには村の儀式とは違う声を上げる必要がある。法的な相談や交渉、また労務管理局の利用など外部と連携する形で労働者が自身の権利を主張する機会が重要だと自分は考えている。時々はこっそりサボるような、適度な息抜きも大切だ。自分の身は自分で守る意識も持とう。

    インパール作戦のような死の行軍を止めるのは、私を含む労働者1人1人の『空気を破る』勇気なのかもしれない。

     
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